マクロ経済スライドって?
厚生労働省のHP「いっしょに検証!公的年金」には以下のように書かれています。
http://www.mhlw.go.jp/nenkinkenshou/finance/popup1.html
マクロ経済スライドとは、そのときの社会情勢(現役人口の減少や平均余命の伸び)に合わせて、年金の給付水準を自動的に調整する仕組みです。
(2)調整期間における年金額の調整の具体的な仕組み
マクロ経済スライドによる調整期間の間は、賃金や物価による年金額の伸びから、「スライド調整率」を差し引いて、年金額を改定します。「スライド調整率」は、現役世代が減少していくことと平均余命が伸びていくことを考えて、「公的年金全体の被保険者の減少率の実績」と「平均余命の伸びを勘案した一定率(0.3%)」で計算されます。
(3)名目下限の設定
現在の制度では、マクロ経済スライドによる調整は「名目額」を下回らない範囲で行うことになっています。詳しい仕組みは、下の図を見てください。
要するに超高齢化社会になるから、支払い側と貰う側のバランスが崩れる。当然、今の国民年金の年金受給額相当額を支払う事が厳しいから今のうちから対策をすると言う施策で、今後の年金の受給額は物価の上昇率以上にはなりませんと言う内容です。
将来の厚生年金・国民年金の財政見通し
厚生労働省のHP「将来の厚生年金・国民年金の財政見通し」に平成26年の試算が発表されています。(平成26年6月)
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/nenkin/nenkin/zaisei-kensyo/
ケースがAからHまで8つの経済想定シナリオ毎に将来の年金がどのようになるか試算しています。
http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/nenkin/nenkin/zaisei-kensyo/dl/h26_kensyo.pdf
A~Eまでは「内閣府試算経済再生ケース」というバブル期の労働力率の平均が2023年まで続くシナリオで、F~Hが「内閣府試算参考ケース」という1983年~2009年の平均が2023年まで続くシナリオです。Aが一番経済が良かったシナリオ。Hが一番経済が悪かったシナリオとなります。
30代の未来年金予想
政府の想定する比較的経済が悪いGやHの場合、モデルケースで30代の人の将来の年金受給額は手取りの3~4割程度になるみたいです。2012年に貰い始めたモデルケースの人が現役時の手取りの6割くらいです。それでも月5~6万円ほど足りないと言われているので、貯金を崩さずに毎月赤字が出ないようにしたければ、8割程度の収入が必要となります。
政府試算を信用して、最悪のケースに備えると、今30代の人は今の老人と同じ老後を過ごす為に単純に毎月手取りの3~5割の自助努力として用意しておく必要がある事になります。当然使うのは30年後なので今のお金の価値ではなく、物価の上昇を考慮して30年後のお金の価値でライフプランを立てる必要があります。
政府はこの足りないお金の財源として被用者保険の適用拡大についても試算しており、短時間労働者、一定以上の収入のある全雇用者からの税収も期待しているようです。
日本政府が物価を上げたいのはマクロ経済スライドを発動させて実質的な年金支払額を早く減らしたいためで、日本政府が老人の労働者や女性の労働者、外国人労働者を増やしたいのは足りない税収を増やしたいためであると見えてきます。こういう背景を知ると、何故あれほどまでに物価を上げようと努力したり、老人の再雇用、女性のマネージャ登用、移民政策について熱心なのか理解できます。日本政府が年齢バランスが崩れて破綻しそうな年金を破綻させないため必死になっているのでしょう。
なにはともあれ、老後は今ですら年金だけでは生きていけません。今後もどんなに良い経済状況でも国民年金だけでは生きていけないのです。既に殆どの国民が自助努力を必要とする時代です。ファイナンシャルリテラシーをより一層高めるように努めるほうが懸命だと思います。